作者 イブ・スパンク・オルセン
訳 やまのうち きよこ
発行年 1975年10月20日
ページ数 24ページ
出典:https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=249
二言紹介
縦の空間を意識させてくれる絵本
心地よく安心して楽しめる絵本
レビュー
読みやすさ ★★★★★ 余裕を持った文字間隔で、読みやすい。
絵 ★★★★☆ 動物たちがポップでかわいい。優しい色づかい。
ユニーク ★★★★★ 縦長の絵本。
おすすめシーン
読み聞かせ ★★★★☆ 空の高さとそこにあるもののお話ができる。
寝る前 ★★★★★ 優しい世界観で、文量もほどよい。
プレゼント ★★★★★ 万人受けする内容だと思う。
概要
お月さまのために、つきのぼうやが水に写った月を取りに行く話。
ある夜、空のお月さまが水に写る自分の姿を別の月と勘違いして、つきのぼうやに水に写った月を連れてきてくれとお願いする。
つきのぼうやは快く承諾し、空から駆け下りていく。
下りていく途中で、雲を通過したり、飛行機や鳥とすれ違ったり、風に吹かれて飛ばされたりする。
地面が近くなってくると、はしごに上っている女の子にリンゴをもらったり、煙突掃除の煙で顔がすすだらけになったりする。
ついには水の中に飛び込み、水の底できらきら光る鏡を見つけた。
つきのぼうやはそれをかわいらしい月だと思い、空のお月さまにもって帰った。
お月さまは、つきのぼうやから受け取った鏡をのぞき込み、そこに写る自分の姿を見て、りっぱで美しいお月さまだといい、気の合う友として話しかけた。
感想
宇宙から海の底までの世界をずーっと描いてくれいている絵本。
生活をしていて、空の上や海の中を想像することはあまりありません。
自分たちが生活をしている高さのことだけを考えていれば、概ね事足りてしまいますからね。
そんな日常に対して、この絵本は横の広がりはなく、縦の広がりだけを描いていて、不思議と新しい観点・考え方を得たような気持になりました。
縦長の本といえば、「100かいだてのいえ」シリーズを思いつきますが、それとは違い雲や飛行機、鳥、風船などを実際の空の高さに合わせて登場させており、絶妙なリアリティーがありました。
ただ、星をけって流れ星にしてしまったり、擬人化したお月さまを登場させたり、何より空から男の子が下りてくるというワクワクするファンタジーがベースになっており、そのファンタジーとリアリティーのバランスがとても心地よく感じました。
もともと水面に写った自分の姿を他の月だと思い、つきのぼうやが持ち帰った鏡に写った自分を眺めて、話しかけるというオチも「そんな勘違いしないよ」と思わせてくれて面白いと思いました。
その一方で、唯一無二の存在であるお月さまにとっては、空の上に一人でいることがどうしても寂しかったのかもしれないとも思い、ちょっと切ない気持ちにもなりました。
無理に縦長にしたのではなく、縦長である必要があったから縦長にした絵本でした。
もし、家の絵本の中にあったら、絵本の個性の幅が広がること間違いなしです。
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