ええこと おもいついた なっちゃん

作者   鍋田敬子
初版   2015年7月1日
対象年齢 年中
ページ数 32ページ

出典:https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=04-0352

一言紹介

創造するたのしさ・大切さを教えてくれる一冊。

レビュー

読みやすさ ★★★★★ 音の大小を文字の大きさで表現していて、初見でも読みやすい。
絵     ★★★★☆ 楽しそうな様子が表情からもよくわかるかわいらしい絵。
ユニーク  ★★☆☆☆ 日常を絵と文字で表現する王道な絵本。

おすすめシーン

読み聞かせ ★★★★★ 子供と物事の考え方を話し合える絵本。
寝る前   ★★★★☆ 文字数も多くなく、軽い本なので、寝そべりながら読んでも疲れない。
プレゼント ★★☆☆☆ 定期購読を想定した絵本なので、単発のプレゼントには向かない。

概要・感想

登場人物は、なっちゃんと3人の兄たちである。
さまざまにシチュエーションで遊ぶ描写が数ページごとに描かれている。

兄たちは、それぞれおもちゃや道具を持っており、それを使って楽しそうに遊んだり、自慢しあったりしている。
しかし、なっちゃんはいつも何も持っていない。

正直、自分がなっちゃんだったら、兄たちに対する嫉妬や劣等感といったネガティブな感情を抱いてしまうだろう。
ところがなっちゃんは違った。
兄たちが自分のもので楽しそうに遊んでいても、平気な顔をしている。
それどころか、兄たちとは違ったやり方を『創造』することで、兄たちとは違う楽しみを生み出していた。

例えば、初めに描かれているシチュエーションでは、兄たちはそれぞれがもっているラジコンカー、ミニトレイン、ミニカーといった乗り物のおもちゃの自慢をしあっていた。
つまり、誰が『もっている』おもちゃが優れているかを競い合っていたのである。
それに対してなっちゃんは、自分で紙飛行機というおもちゃを『つくり』、紙飛行機を飛ばすという兄たちのおもちゃとは『比較できない』遊び方をした。
同じ乗り物のおもちゃという枠の中でも、周りとは違うやり方で、異なる楽しさの観点をもった遊びをすることで、周りと比較されず(せず)に、楽しく過ごせたのだろう。

人生において、自分が身を置く環境を選べないことがある。
自分がいる環境の多くのメンバーが自分よりも優れたものをもっていたり、ある価値観で自分が劣っていた時にストレスを感じることもあるだろう。
そんなとき、周りとは違うことにストレスを感じずにみんなで楽しく過ごすために、なっちゃんのようにできること創造することは、豊かな人生を送るために大切なことだと思った。

子育てをしていて、子供にものを買い与えて、自分自身が達成感を得てしまっていることがある。
きっとおもちゃや便利なものを子供に買い与えていては、なっちゃんのような創造する力は育たないだろう。
環境が自分に合わせてくれるので、創造する必要がないからだ。
子供が今も未来も楽しく幸せに過ごせるようになるためには、置かれた環境の中で満たされないことがあったときに、どうしたら満たされるのか、子供と一緒に悩み考えていきたいと思う。

最後に、この話を読み終えたとき、経済理論の一つであるレッドクイーン理論を連想した。
技術の進化が目まぐるしい現代において、同じ価値観の競争ではなく、新たな価値観の創出が今の日本経済にはきっと必要である。

そんなことまで考えさせてくれる絵本でした。

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