ひとあし ひとあし

作者   レオ・レオニ
訳    谷川俊太郎
発行年  1975年
ページ数 32ページ

http://www.kogakusha.com/book/ひとあしひとあし/

二言紹介

『芸は身を助ける』を感じた一冊。
より幸せな生き方を考えさせられる一冊。

レビュー

読みやすさ ★★★★★ ひとつの文章が短め。
絵     ★★★★★ レオ・レオニの絵が大好き。
ユニーク  ★★★☆☆ レオ・レオニは絵本の王道のひとつ。

おすすめシーン

読み聞かせ ★★★★★ 子供と会話の難しさ、大切さを話し合える絵本。
寝る前   ★★★★★ 優しい絵、程よい文章量で寝る前にもピッタリ。
プレゼント ★★★★★ レオ・レオニは世界中で人気。

概要

しゃくとりむしが生きるために頑張るお話。

ある日、しゃくとりむしは こまどりに食べられそうになってしまう。
窮地に追い込まれたしゃくとりむしは、自分は長さを測れて、便利であることをアピールした。
それを聞いたこまどりは、自分のしっぽの長さを測ってもらい、とても喜んだ。

その後、こまどりに連れられ、他の鳥たちのいろいろな長さを測って、生き延びていった。

ある朝、ある鳥に歌を測ってほしいといわれる。
無理難題をふっかけられた しゃくとりむしは、困ってしまう。
しゃくとりむしは、考えた。
しゃくとりむしは、鳥に歌うように指示し、歌を測るといって一歩一歩鳥から離れていった。
そして、最後にはどこかにいなくなってしまった。

感想

強者の傲慢さとより幸せな生き方を考えさせられる一冊でした。

■強者の傲慢
まず読んでいて引っ掛かったことは、初めにこまどりのしっぽの長さを測ってあげた後に、解放されずに、他の鳥たちのところに連れ去られて、そこでもいろいろなものの長さを測らなければならなくなったことです。
鳥たちと比べて 弱いしゃくとりむしは、鳥たちの長さを測る作業を繰り返し行わされてしまいます。
いつ食べられてしまうかわからないので、しゃくとりむしは言うことを聞くしかありませんでした。
食べられてしまうよりはましなのかもしれませんが、とても苦しい時間を過ごしたに違いないと思いました。
そのような強者弱者の関係で弱者が不利益を被ることは、人間の社会においてもあると感じました。
例えば、パワハラやいじめといった行為は、会社での地位やスクールカーストといった外発的・内発的な指標で、強者と弱者に分けられることで生じます。
自分自身も気づかないうちに、こまどりのように強者であることを利用した傲慢な態度をとってしまっていないか、振り返って考えさせられました。

■より幸せな生き方
そんな鳥たちの行為に対して、ひたむきに測り続けている しゃくとりむしがとても健気で、「生き延びるために頑張れ!」と応援したくなりました。
ある日、ナイチンゲールという鳥に歌を測ってくれという無理難題をふっ掛けられたことは、測ることで生き延びてきた しゃくとりむしにとって、大ピンチだったと思います。

そのピンチに対して、しゃくとりむしは「自分が求められていること(歌を測ること)」をやるふりをして、「自分がやりたいこと(逃げて生き延びること)」を実践してみせました。
この発想に、自分はハッとしました。
本来の目的である生きることを考えれば、バカ正直に長さを測り続ける必要はなく、逃げられれば逃げることは当然でした。
しゃくとりむしは、「測る ⇒ 食べられない ⇒ 一時生き延びる」という上手く生き残る仕組みにとらわれずに、「逃げる ⇒ 自由に生きる」といった より幸せな生き方を選ぶことができました。
自分自身の人生においても、より幸せな生き方を選び損ねていないかと考えさせられる一冊でした。

人はいろいろな指標によって、強者と弱者に分けられてしまいます。
これは、この世に価値が存在する限り、仕方がないことだと思います。
絵本では、虫と鳥といった食物連鎖内の強弱関係の話なので、強者も弱者も仲良く過ごすことはできないと思いますが、人の社会の中での強弱関係においては、その限りではないはずです。

自分自身が強者に位置したときは、傲慢にならず、いつでもみんなが安心して楽しく過ごせるようにしなければならないと、改めて思いました。
また、とりあえず今過ごせている現状の習慣を当たり前だと思わずに、より豊かな人生を過ごせる習慣を模索していきたいと思わせてくれる一冊でした。


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